退職して厚生年金から外れると、60歳未満の方は国民年金(第1号被保険者)に切替が必要です。月額1.7万円程度の保険料が発生し、失業中の家計には大きな負担。ただし、失業者向けの特例免除を活用すれば、前年所得が高くても保険料を全額または一部免除できる可能性があります。本記事では、退職時に使える免除・猶予制度の全体像と申請手続きを、退職給付金 比較メディア編集部が整理しました。「払えないから未納」は最悪の選択肢。正しい申請で家計を守りましょう。
1. 退職後、国民年金はどうなる?
在職中は厚生年金に加入しており、保険料は会社と折半。給与から天引きされていました。退職して厚生年金から外れると、60歳未満の方は国民年金(第1号被保険者)への切替が必要です。
切替手続きは住んでいる市区町村の国民年金窓口で、退職翌日から14日以内に行います。配偶者が会社員で扶養に入る場合は第3号被保険者(保険料負担なし)。それ以外は第1号として、自分で保険料を納付することになります。
| 区分 | 対象 | 保険料負担 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 自営業・無職・学生・失業者など | 自己負担(月額約17,000円) |
| 第2号被保険者 | 会社員・公務員(厚生年金加入) | 会社と折半 |
| 第3号被保険者 | 第2号の被扶養配偶者 | 負担なし |
⚠️ 切替は自動ではない。退職後の国民年金1号への切替は、自動的にはされません。市区町村役所での届け出が必要です。手続きを忘れると未納期間が発生し、後から保険料が遡って一括請求されることもあります。
2. 国民年金の保険料額と未納のリスク
2025年度の国民年金保険料は月額17,510円(毎年改定あり)。年間で約21万円の負担です。配偶者がいる場合は本人+配偶者の両方分が必要になり、月額3.5万円超となります。
保険料を未納のまま放置すると、以下のリスクがあります。
- 将来の老齢基礎年金額が減る(未納期間に応じて)
- 万一の障害・死亡時、障害基礎年金・遺族基礎年金が受給できない可能性
- 督促状の送付、財産差押えなどの強制徴収
- 世帯主・配偶者にも納付義務が及ぶ場合がある
✅ 「払えない」なら「免除・猶予」を申請。保険料を払えない時は、無断で未納にするのではなく、必ず免除・猶予制度を申請してください。申請して承認されれば、未納のリスクを避けつつ将来の年金受給権も一部維持できます。
3. 免除・猶予制度の全体像(5つの区分)
国民年金には複数の保険料軽減制度があります。失業中の方が利用しやすい主な制度を整理しました。
| 区分 | 納付負担 | 将来の年金額への反映(目安) |
|---|---|---|
| ① 全額免除 | 0円 | 満額の2分の1 |
| ② 4分の3免除 | 1/4納付 | 満額の5/8 |
| ③ 半額免除 | 1/2納付 | 満額の3/4 |
| ④ 4分の1免除 | 3/4納付 | 満額の7/8 |
| ⑤ 納付猶予(50歳未満) | 0円 | 反映なし(追納で復活) |
| ⑥ 学生納付特例 | 0円 | 反映なし(追納で復活) |
💡 「免除」と「猶予」の違い:免除は将来の年金額にも一部反映されます(全額免除でも2分の1相当)。猶予は受給資格期間にカウントされますが、将来の年金額には反映されません。後から追納すれば年金額も復活します。
4. 退職者の強い味方「失業による特例免除」
特に注目してほしいのが、退職した方を対象とした「失業による特例免除」です。通常の免除は前年所得で判定されるため退職前に高所得だった方は通らないことが多いですが、特例免除では失業者本人の所得を「ゼロ」とみなして判定してもらえます。
対象になる方
- 会社都合・自己都合を問わず、雇用保険の被保険者だった方が離職した場合
- 失業者本人の所得をゼロとして判定(配偶者・世帯主の所得は審査対象)
- 退職した月の前月から、翌々年6月までが対象期間
- 事業の廃止・休止の届出があれば自営業の方も対象
✅ 特例免除は知らない人が損をする制度。失業した方の多くは前年所得が一般水準のため通常免除は通りにくいですが、特例免除なら通る可能性が大幅に上がります。窓口で「失業による特例免除を希望」と明確に伝えることが重要です。配偶者・世帯主の所得が高いと半額免除等になることもあります。
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5. 申請の流れと必要書類
申請の流れ
- 住所地の市区町村役所の国民年金窓口(または年金事務所)へ
- 「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」を入手
- 必要事項を記入し、必要書類を添付して提出
- 日本年金機構が審査(数ヶ月かかる場合あり)
- 結果通知が郵送される(承認・却下・段階別承認)
主な必要書類
| 書類 | 用途 |
|---|---|
| 国民年金保険料免除・納付猶予申請書 | 窓口入手 or 日本年金機構サイトからDL |
| 本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカード等 |
| 雇用保険受給資格者証または離職票のコピー | 特例免除を申請する場合に必須 |
| マイナンバーが分かる書類 | マイナンバーカード等 |
💡 遡って申請も可能:申請月の2年1ヶ月前まで遡って申請可能です。すでに払い済みの分は遡及できませんが、未納期間については最大2年分遡って免除申請できます。退職してすぐ申請するのが理想ですが、思い出した時点でも遅くないケースが多いです。
6. 免除を受けると将来の年金額はどうなる?
免除を受けた期間は、全額納付時と比較して将来の年金額が減ります。ただし、未納と違って「将来の年金額にゼロ反映」ではなく、一定割合は反映されるのがポイントです。
上記の比較表のとおり、全額免除でも将来の年金額には満額の2分の1が反映されます。完全な未納と比較すると圧倒的に有利です。
7. 「追納」で取り戻すことも可能
免除・猶予を受けた保険料は、10年以内であれば追納(あとから納付)することができます。経済状況が改善したら追納することで、将来の年金額を全額納付と同じ水準に戻せます。
⚠️ 追納するなら早めが有利。免除を受けた年度から3年以上経過すると、当時の保険料に加えて加算額が上乗せされるため、追納するなら早めが有利。年金事務所で追納可能額・期限を確認できます。
8. よくある勘違い
勘違い①:「払えないから放置すればいい」
未納は将来の年金減+障害・遺族年金資格喪失+督促のリスクの三重苦。必ず免除・猶予を申請してください。
勘違い②:「失業中は自動的に免除になる」
免除は自動適用ではなく、本人の申請が必要です。市区町村窓口で離職票等を提示し、特例免除の申請を行ってください。
勘違い③:「免除されたら追納しなくていい」
免除を受けた期間は将来の年金額が減ります。経済的余裕ができたら早めの追納で、年金額を元に戻すのが賢明です。
9. 専門家への相談
「自分が免除対象になるか分からない」「追納すべきか判断できない」と感じたら、専門家への相談がおすすめです。
| 相談先 | 得意領域 | 費用 |
|---|---|---|
| 年金事務所 | 国民年金全般の手続き・将来の年金額試算 | 無料 |
| 市区町村役所(国民年金窓口) | 免除・猶予の申請受付 | 無料 |
| 社会保険労務士 | 個別ケースの最適解 | 事務所により異なる |
| 退職給付金サポートサービス | 年金+健康保険+失業給付の横断整理 | サービスにより異なる(無料相談可も) |
まとめ:未納ではなく「免除・猶予」を選ぶのが正解
- 退職後60歳未満は国民年金(第1号被保険者)に切替必須
- 払えない場合は「未納」ではなく「免除・猶予」を申請
- 失業者向けの特例免除を使えば、前年所得が高くても通る可能性大
- 申請には「離職票」または「雇用保険受給資格者証」が必要
- 免除を受けた分は10年以内に追納すれば将来の年金額を取り戻せる
12. 国民年金と他制度の組み合わせ判断
国民年金の免除・猶予は、健康保険・住民税・失業給付など他の制度とまとめて検討すると、家計全体の負担を最適化できます。失業給付の特例免除を受けながら、健康保険は会社都合退職の軽減措置を活用、というように、複数の制度を組み合わせるのが基本戦略です。
10. 配偶者の扶養に入って第3号被保険者になる選択肢
もう一つ重要な選択肢が、配偶者が会社員・公務員の場合に第3号被保険者になる道です。
第3号被保険者の主な要件
- 配偶者が第2号被保険者(厚生年金加入の会社員・公務員)
- 本人の年収見込みが130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)
- 配偶者の年収の2分の1未満(同居の場合)
第3号被保険者になれば、保険料負担はゼロで、しかも将来の年金額には全額納付と同じく満額が反映されます。免除制度より圧倒的に有利なので、配偶者が会社員で要件を満たすなら、まずこちらを検討すべきです。
⚠️ 失業給付受給中は第3号被保険者になれないことも。失業給付の基本手当日額が3,612円以上の場合、年換算で130万円を超えるため、給付受給期間中は被扶養者・第3号被保険者になれません。受給終了後に切替えるパターンが一般的です。
11. 免除申請の3つの失敗例
失敗例①:「離職票を待っていたら申請が遅れた」
離職票は退職翌日から10〜14日で会社から届くのが目安。届くまで申請を保留している方が多いですが、離職票が届いた時点で速やかに申請するのが正解。早く申請すれば、それだけ早く免除期間がスタートします。
失敗例②:「世帯主の所得が高くて全額免除にならなかった」
特例免除は本人所得を0円とみなしますが、世帯主・配偶者の所得は通常通り審査されます。世帯主が高所得の場合、4分の3免除や半額免除になることがあります。これでも「全くの未納」より圧倒的に有利なので、申請する価値は十分あります。
失敗例③:「追納のタイミングを逃した」
免除を受けた期間から10年を過ぎると、もう追納できません。さらに、3年以上経過した分は加算額が上乗せ。経済状況が改善したら、なるべく早く追納するのが賢明です。
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※ 本記事は一般的な解説であり、個別の受給可否・金額・手続きの判断を保証するものではありません。具体的な判断については、ハローワーク・年金事務所・税理士・社会保険労務士等の有資格専門家にご確認ください。記載内容は2026年6月時点の制度に基づきます。




